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「CONNECT⇄_」 and DOMANI @京都 「宮永愛子 公孫樹をめぐるロンド」 (文化庁「障害者等による文化芸術活動推進事業」関連プログラム)

11月30日(火)、京都府立図書館にて「CONNECT⇄_」 and DOMANI @京都 「宮永愛子 公孫樹をめぐるロンド」が開幕しました。(12月19日(日)まで)

宮永愛子さんは、日用品をナフタリンでかたどったオブジェや塩、陶器の貫入音や葉脈を使ったインスタレーションなど、気配の痕跡を用いて時間を視覚化し、「変わりながらも存在し続ける世界」を表現する作家です。

今回「and DOMANI」だけではなく、過去には「DOMANI・明日展2020」国立新美術館(2020)、 「DOMANI・明日展 PLUS×日比谷図書文化館 Artists meet Books 本という樹、図書館という森」千代田区立日比谷図書文化館(2017)、「DOMANI・明日展 PLUS×京都芸術センター ワームホール・トラベルーゆらぐ時空の旅ー」京都芸術センター(2016)に出品をしており、「DOMANI・明日展」とは深い関係がある作家の一人です。

会場の京都府立図書館(2001年改装)は、建築家・武田五一(1872-1938)の設計により創建された日本でも最も長い歴史をもつパブリック・ライブラリーのひとつです。

風除室に入ると先ず目に飛び込んでくるのが高さ2mほどある本展のバナー。
そして入口に入ると主催あいさつ、作家コメント、新進芸術家海外研修制度の説明などがあります。
先ずは、ここで立ち止まって一読していただければ、展示を一層楽しんでいただけるのではないでしょうか。

 

宮永さんの作品は1階と地下1階に展示されています。
1階の作品は《ロンド-Ladder-》が展示。
          

   

天井から糸で吊り下げられたLadder(はしご)は、視線を自然と上へと誘導し、窓から漏れる陽光、景色そして天井の高さなど新たな発見へと導いてくれます。
そして、Ladderは旧館時代のコーナーボードへとつながり、扉から漏れる光の中には府立図書館近くにあるイチョウをかたどったナフタリンのオブジェがガラスケースに納められています。
そのイチョウのオブジェは、時間の経過とともに昇華し、形を失っていきます。そして昇華したナフタリンはガラスケースの内側に結晶を生み出します。
この展示では、静謐で移ろいゆく世界を図書館という空間の中で感じられることでしょう。

地下1階に降りると、中央螺旋階段下に開館時から図書館にある、陶芸家・初代宮永東山(宮永愛子さんの曽祖父)の作品《公孫樹文花瓶》、花置台そして宮永愛子さんの《ロンド(神宮道-深草)》が展示されています。
 
《ロンド(神宮道-深草)》は、図書館創建時に使われていた扉の鍵穴周りをトレースした紙を2枚重ね合わせ、京都府立図書館のイチョウ(画像左)や東山窯のイチョウ(画像右)で染色した糸で空気を包み込んでいます。
同じ時期に採取したイチョウでも場所が違えば染色した糸に色の違いがでているのと、どことなく感じられるそれぞれの場所の気風を楽しんでいただけるのではないでしょうか。

武田五一デザインの旧館時代の花置台もその隣に展示されており、この丸い跡は、当時ここに初代宮永東山の《公孫樹文花瓶》が置かれていたことを示す痕跡です。
 

その反対側に展示されている作品は同館2階で開催されている「塙保己一 おどろきの『群書類従』!」展を繋ぐ作品となっており、渋谷にある塙保己一史料館前のイチョウを糸に染色し、京都府立図書館の職員が史料館の版木で刷った紙をその糸でくくり、空気を閉じ込めたものです。
椅子は武田五一が20世紀初頭の西欧で魅了されたアール・ヌ―ヴォーの感興を再現したもので、猫耳やハート型の背もたれなど、何とも可愛らしい作品です。
 

そこから奥に進むと、まるで自然とそこに置かれていたかのように図書館の雰囲気に溶け込んだ《Strata》の作品が並べられています。
 
 
ガラスでできた作品は、よく目を凝らしてみれば、本の中に刻まれた数字(大潮歴)が発見できます。

その先、屋外には《ひかりのことづけ》が展示。


この作品は、東京ビエンナーレで今年7月に東京の湯島聖堂前庭でも展示された作品です。湯島聖堂は図書館発祥の地といわれており、そこで展示された作品が歴史ある京都府立図書館でも展示されています。
直接屋外に出て鑑賞することはできませんが、外から除き込むことも出来ますし、室内から眺め、ガラスの作品がいくつあるのか数えてみるのも龍安寺の石庭を彷彿させて面白味があります。
屋外展示ということもあり、直接外光を受けて光輝くガラスの作品に《Strata》とはまた違った美しさがみてとれることでしょう。

京都府立図書館は、当初「陳列室」があり、1933年に現在の京都市京セラ美術館が開館するまで、美術機能を担ってきました。
今回、開館当時からある陶芸家・初代宮永東山の作品《公孫樹文花瓶》を起点に、そのひ孫にあたる宮永愛子さんが、図書館の建物と旧館時代の家具を活かし制作したインスタレーション作品を会場でご覧いただければ、昔―今とつながるロンドを感じていただけるのではないでしょうか。

会期:2021年11月30日(火)~12月19日(日)  月曜日休館(12月6日、13日)
開館時間:平日 9時半~19時、土日祝 9時半~17時
会場:京都府立図書館
入場無料
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