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2月9日 イベントレポート[宮永愛子×港千尋(写真家、著述家、多摩美術大学教授)]

2月9日(日)に宮永愛子さんと港千尋さんのアーティストトーク「かわる景色」を開催しました。

トーク内容の一部抜粋となりますが、イベントレポートです。

 

どのように考えて作品を制作しているか―
もともと彫刻出身で、どこにどんなふうに置いたかということまで作品とするインスタレーションをやっていました。
もっと簡単にどのように彫刻をしていくか、空間をどうとらえるか、どういうふうに置けばどんなことが起こるのか、何歩あるけばどんな風景が見えるのかを考えながら作品を制作しています。

ナフタリンとの出会いは、衣替えの時、防虫剤のナフタリンの素材の面白さに気づき、それを使って作品を制作したいと思ったのが最初でした。
彫刻の在り方は、分からないけど在りうることを想像して作品を制作するものですが、何か違うこと、誰もやっていないことやりたいということで、ナフタリンという素材を使いました。
ナフタリンは、時が経つと消えてしまいます。
「消えて変わる作品が作れる!」
素材としてとても魅力的で、形あるものが形なくなる、それが珍しかったのです。

2003年ぐらいに、新しい風を吹かせたいと思い、ナフタリンの作品を公募展に出品しました。ナフタリンはにおいが出るのでカバーをかけ、透過性があるのでライトを入れました。数日後、カバーの中に結晶が出来ていて、消えることが珍しいと思っていましたが、ケースの中で形成され、消えたのではなく、形を変えただけと気づきました。
自分たちも変わりながらあり続けている世界にぴったりという新しい発見から、結晶の作品を出すようになりました。

自分がやりたい大切なことは、世界が変わりながらあり続けている私たちの微妙なバランスで、今日があって明日のことがどうなるか分からないし、こういう状態で今自分たちは生きているっていうようなことを考えて、作品を制作することです。

「変わらないであるとはどういうことか」を考えていました。
儚い→弱い→もろい...
儚いと考えた時、自分の作品は弱いのか、いやそうじゃない、変わる柔軟さがあると考え、変わり続ける世の中に柔軟で強靭なんだと思うようになりました。

「景色のはじまり」について―
金木犀の葉だけでつながっていて、とても軽い作品です。天井からかかっているだけで、前半分は2012年、後ろ半分は2010~2011年に制作しました。全部で約12万枚の葉を使用しています。
2010年にギャラリーから展覧会の依頼がありました。空間に何枚必要か想像した時、「大変そうだなー」と思いましたが、ギャラリーの後押しがありやることになりました。
最初は「見てみたい」の気持ちでした。葉脈標本を見ていた時、俯瞰したGoogle mapの航空写真に見えました。水(葉脈)が通っているのは道、繋いだらどんなことが起こるだろう、新しい地図を作ってみたいという気持ちからです。

初めは東京(ギャラリー)で作業をしていましたが、膨大な枚数に追い付かず展覧会に間に合わないかもしれないということで、京都の学生を巻き込んで、1週間だけということで、制作の場を京都に移して行いました。その時、震災が起こりました。作業は途中となり、東京に戻って制作どころではなく、もっと大切なことがたくさんあって、やっている場合ではありませんでした。そのためこのまま京都で作業を進めることになりました。どうしていいか分からず、展覧会がやれるかどうかも分からない、ラジオからは色々な情報が流れて、同じ気持ちになっていました。
作品がどうなるか分からなかったのですが、ギャラリーから開催の連絡が入りました。その時の開催のリリースは自分で書きました。
(リリース内容、ミヅマアートギャラリーHPより
https://mizuma-art.co.jp/exhibitions/1104_miyanagaaiko/

金木犀を選んだのは、誰でも知っている葉っぱ、日本の庭木の中で一番ポピュラーで、みんなが嗅いだことがある匂い、それぞれの記憶の時間がつながるからです。

この作品を制作している途中で、震災が起こり、何をしていいか悩んでいました。作業と向き合う時間が、とても良い時間だったような気がします。この作品を見ると、あの時の感情を思い出し、熱い気持ちになります。

展示風景 撮影:宮島径